◆座談会メンバーのプロフィール
K 外国籍及び特定技能の人材紹介に従事し、現在はマーケティングやメディアで営業。以前は営業と外国籍の人の生活をサポート。
J 東京にある外資系の人材会社勤務。様々な業界、職種をカバー。コンサルタントとして、企業側への営業と求職者の面談を行う。
M 都内で、日本語が話せる外国人人材や海外経験者の転職支援を行う。これまで、企業の採用支援や求職者対応に関わってきた。
Y 総合人材サービスの会社で、人材紹介に携わる。前職が化学メーカー。
現在はエンジニアやブルーワーカーの人材の転職支援を担当。
E 企業のR &D部門の人事経験後、全社採用部門に所属。理系学生や留学生の採用、また、就活前の学生の採用マーケティングにも関わっていた。
◆外国籍人材にも日本語能力が求められる
—さまざまな人材業界で働いていますね。日本で就職を希望する外国籍の人は多いですか?
K 多いですね。
E 国の方針もあり、日本で働く人は増えていると思います。
K 日本の文化が好きで日本にいて、日本人と結婚し、そのまま日本で就職するというパターンの人も少なくないです。
E 私が採用活動する中で出会った学生には、自国よりも就職しやすそうだからと日本で就活をしている人もたくさんいました。
—外国籍の新卒採用をしている企業はどの業界に多い? また、どのくらいの日本語能力が求められますか?
K 日本のどの業界も募集しています。私が担当しているメーカー領域でも、外国籍の方々を多く採用している印象ですね。すべての日本企業に英語で意思疎通ができる社員がたくさんいるわけではないので、日本語で意思疎通ができるか否かは求められるケースが多いようです。
ただ、もちろん、仕事によって求められる日本語レベルは異なります。新卒採用でも、その会社の求めるスキルや人柄が合致していれば、日本語力が高くなくても採用されることもあります。
E 私がいた会社(メーカー)はその時々の採用戦略にもよりますが、リクルーターと接点がある場合以外は、基本的に文系の学生は日本語能力試験のN1が必須でした。エンジニアなど、IT系は英語ベースで受け入れたことがありましたが、それでもN1・N2の取得者が多かったですね。
M 日本語能力試験の初級(N3、N4)レベルだと、履歴書すら受け取ってもらえないケースが少なくないと思います。業務で専門的な日本語を取り扱ったり、日本語の交渉が頻繁に発生する場合など、日本語ネイティブに推薦を限定してほしいという要望は多いですね。
J 外資でも企業の共有言語はほぼ日本語で、面接なども日本語などで行われます。日本語は必須です。
M 教える側が日本語しかできない場合、人事的には配属させづらいですからね。ただ、業務上高い日本語力が必要でないのであれば、優秀なスキルを身に着けている外国籍の方を、日本語力のみを理由に採用しないはもったいないように思います。教える側の英語力強化や、グローバライゼーションも求められていると考えます。
—日本語の他に、就職活動に有利な言語はありますか?
J 私の経験では、募集してる会社のマネージャーが韓国人なので、韓国語を話せる人が採用されたということはありました。
E ヨーロッパ系の企業は共通言語は英語なので、特定の言語が求められるということはなかったです。ただ、子会社がたくさんある中国の企業では、中国語が堪能な人材を中国のマーケット担当として重宝することはありました。
K 外国語が話せるに越したことはないと思います。ただ、本当は外国語が必要な場面でも、日本語だけで仕事ができてしまうこともあるようです。例えば、大手メーカーでは現地スタッフの日本語が上手い場合も多く、海外駐在員として派遣された時に、現地の言葉が話せなくても何とか仕事ができてしまうケースがありますね。
◆早期離職を懸念して採用に消極的なケースも
—求人票では国籍の指定はできません。しかし、実態として、特定の国籍の人を募集することはあると耳にします。
M はい。営業など、日本語でのやり取りが頻繁にあるなどの理由で、選考途中で日本国籍の要望が出されることはあります。
J 外資でも、働いている人もお客様も日本人という場合は、「可能ならば」という前置きがあって国籍や年齢の希望を出されるケースは見られます。
K 私が担当した案件では、ベトナムに進出したいからベトナム人を募集するといったことがありました。
M たしかに海外進出、ゲーム•アニメの翻訳の案件だとその国の人を求めることはあります。親日の国も多いので、ある一定の国に偏りますが。
—外国籍人材の新卒採用で、懸念していることはありますか?
K 「外国籍人材はいつか母国に帰ってしまう」という先入観をもつ採用担当者が、少なくないこと。長期的に日本で働くことを考えている外国籍の人もいることを、もっと知ってほしいですね。
E 人事が一番怖いのは早期離職ですからね。採用にはかなりコストがかかるので、少しでも考慮するポイントを減らして、早期退職を防ぐという理由があると思います。
M そうですね。採用にかかったコストを回収するためにも、投資した就活生が企業に定着してコストを回収できるかが重要ですからね。
E 一方で、日本は少子化により今後採用がより一層難しくなる上に、同質性の高い組織であることがプラスでないことは企業も分かっているので、外国籍人材の採用は重要になってきます。
また、早期退職は外国籍だけの問題ではないので、外国籍含めた多様なバックグランドを持つ社員が長く働きやすい環境を作っていくことも大切なのではないでしょうか。
◆日本企業側も相手の文化を理解する姿勢が大切
—これから日本で就職活動をする外国籍の人にアドバイスをお願いします。
K 大変ですが、まずは日本語を磨き日本語でもディスカッションができるようになること。それだけで、日本でのキャリアを切り開きやすくなると思います。
E 一般的な話で言うと、就活の時に先輩社員と接点があると、通常エントリーするよりは、引っかかりやすくなります。外国籍の場合も、より社員と接点を持つと、言語面などで落とされにくくはなりますね。
また、グローバルに展開している企業だと、将来的には、母国の現地社員になってもらいたい、母国の架け橋になってもらいたいという理由で採用をしていることが少なくありません。ご自身の経歴や経験をもとに、いかにそうしたニーズに応えることができるかという視点からPRをしていくといいと思います。
M 日本の文化理解ですかね。例えば、ハイコンテクストの理解は重要だと思います。
J 外資でも、ジュニアとミドルのポジションは、内部と外部、様々な人とやり取りをしなければならないので、日本語でのハイコンテクストなコミュニケーションは求められます。
M ハイコンテクストの理解は、日本人の就活生でも苦労するときがあります。だから、就職するにはハイコンテクストの理解も欠かせない一方で、企業側のコミュニケーションの見直し、歩み寄りも課題だと考えます。外国籍側だけでなく、日本の企業の方も相手の文化を理解する姿勢が大切だとつくづく思いますね。
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人材業界座談会、新卒編はここまでです。
次回は後半の中途採用編(近日公開予定)に続きます!
執筆:里見 春佳(Living in Peace)