Living in Peaceマイクロファイナンスプロジェクトは第二種金融商品取引業登録を保有するミュージックセキュリティーズ株式会社と協業し、アフリカのケニアでの支援を目指して2022年6月にLIP-HAKKIケニアファンドを組成しました。
本ファンドは、株式会社HAKKI AFRICA(代表取締役:小林嶺司)への出資を通じて、ケニアの低所得層の人々が金融サービスにアクセスし、経済的に自立するチャンスを提供することを目指しています。※LIP-HAKKIケニアファンド事業概要はこちら
HAKKI AFRICAの2023期(2022.9~2023.8)が完了したタイミングに合わせてHAKKI AFRICA(以降、HAKKI) CEOの小林さんとLiving in Peace(以降、LIP)代表理事の龔にて対談(オンライン)を実施しました!
前編(こちら☆)に続き、後編をぜひご覧ください。
※本記事は投資家向けレポートから抜粋してお届けいたします。
龔:次はHAKKIの事業動向についてお伺いしたいと思います。2023年期についてどのような評価をしていますか?
小林:ポジティブな要素としてはシリーズB(※1)を迎えることができました。
シリーズA(※2)についての雪解けも感じています。最初は株主資本を融資に充てるしかなかったが、シリーズAでノンバンクから、Bで商業銀行から調達をすることができました。これは現地で地道に行ってきた誠実な努力が認められた、第三者に対して信用がついてきたと感じています。
ネガティブな要素はスタートアップなので数えだしたらきりがありません。一方で課題として捉えなくなったらスタートアップではなく、成長が止まってしまう。
自己否定をし続けることが大事だと考えています。
龔:シリーズBおめでとうございます!
資金調達は順調のように見えますが、今後の注力ポイントはどのあたりになるのでしょうか?
小林:大きな課題は2点だと考えています。
1点目は他国展開です。「多」ではなくまずは「他」の1~2か国でしっかりやりたい。
アフリカ55か国、法規制も違うし、文化も言語も違う。その中で今のモデルの再現性をどうすれば高められるか考えています。
2点目の課題はミドルマネージャーの増員です。数字を分析できる、成長を推進できる人材が欲しいです。ただ、ケニアの国民性は日本人に近いかもしれませんが、主導権を取りたがらない、リスクを取らない傾向があります。
ケニアにもオラクル等、グローバルの企業はありますが、超高単価なトップマネジメントだけであり、中間の人材がマーケットにいません。グローバルのナレッジがある、事業開発、組織運営等の経験がある人が入ってくれればと考えています。
龔:現状の体制はどのようになっているのでしょうか?
小林:取締役、ミドルマネージャー1名、スタッフ約30名という体制です。
正直どちらが正解か答えは出ていませんが、やり方を変えることで改善する部分があるかもしれません。
全権委任をしていないので大きく成長しきれていない部分もあると思います。
あとはダイバーシティが足りていない部分も。ケニアでは民族、出身エリア等を気にしてそのメンバーで集まる傾向があり、それが同質化に繋がっている部分があります。
例えばヨーロッパ人を入れてしまう、みたいなダイバーシティを進めることで何か変化が起きる可能性はあるかもしれません。
龔:ミドルマネージャーがいない、育ちにくいのはケニアの社会背景等も影響しているのでしょうか?
日本は終身雇用が根付いてきた歴史もあり、比較的階層ごとの研修や人事制度が確立されていますが。
小林:社会構造として個人商店が多く、多人数の組織が成り立ちにくい面はあります。
結果、大学でも組織運営、組織成長を学ぶ機会、意識は少ないです。
とはいえケニア以外はもっとその構造が顕著なので、増やすならケニアで行うしかないと考えています。そのうえで可能性としてはグローバル企業の人材を採用してくるのが現時点では現実的かなと考えています。
龔:資金調達及びケニア内での成長が順調な一方で、他国展開に際しては時間をかけて慎重に調査をされていますよね。
小林:それには明確な理由があります。
2017年ごろからアフリカ経済が盛り上がっていき、投資家も見極めながら投資額を増やしていっていたが、2022年がピークで2023年で落ち始めています。
つまり2022年頃からアフリカ大陸への投資に対する答え合わせが出そろってきているということです。赤字を垂れ流しつつもとにかく拡大みたいなところは失敗、という評価が明らかになってきています。
投資家の償還期間と合わないかもしれないが、HAKKIは長期的な成長を目指しています。毎年200%のKPI達成を目指していない。95~105%あたりを目指しています。
アフリカでの実績がないのに大きな企業評価額を掲げる事業家もいるが、HAKKIは日本型の地に足が着いた成長を目指したいと考えています。孫さんが300年企業を創ると言っているがそれに似ていますね。
「今、アフリカが熱い」というのは私は信用していなくて、様々な社会基盤の成長等があって真の発展があるので、少なくともまだ10~15年はかかると認識しています。そこに合わせた形で成長していきたいと思います。
龔:ケニアの外部環境に何か変化は生じてきていますか?
小林:競合他社は増えておらず、ブルーオーシャンの感覚はまだあります。
ただし、インフレ等の影響は極めて大きいです。
アフリカはドルに頼る経済構造であり、為替影響は甚大です。利益を50%伸ばしても為替ですべて無くなっている企業の例も多い。
とはいえ今年に入り多少収まってきており、長い目で見れば一時的なものだと思っています。アクセルを踏みすぎず、着実に成長していけば、乗り越えられるのではないかと考えています。
龔:LIPは東南アジアのMJIとの間でもファンド組成しており、経営者同士で情報交換するのもいいかもしれませんね。
小林:本当にそうですね。アフリカの研究を進めるほどに別のエリアの勉強もしたいと感じ ています。東南アジアも国によって全く環境が違うはずで、そういった違いを調査したい思いに駆られています。
アフリカにおいては、上場にあたっての監査コストだったり、移動距離だったり、危険度合といったカントリーリスクが多く存在します。
他のエリアを見る、勉強する合理性はあると考えていて、東南アジア等も含め、鷹の目で見たうえで、次の進出先にはこの国を選んだといったプロセスを踏みたいと考えています。
龔:小林さん、今回は貴重なお話をありがとうございました!