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世界には、金融サービスを受けられない人々が20億人いる
私たちの生活は金融サービスと密接に関わっています。日本では、多くの人は銀行や郵便局に預貯金口座を持ち、銀行口座経由で給与を受け取ります。大学進学時に教育ローンや奨学金を借りた人や、将来に備え各種保険に加入する人も少なくないでしょう。 しかし、このような基礎的な金融サービスにアクセスできない「金融排除(Financial Exclusion)」と呼ばれる状況に直面する人々が、世界には少なくありません。
2014年現在、世界では20億人が基礎的な金融サービスを受けられない状態にあると言われています。下図は、各国の銀行口座を保有する人の割合で色分けされた世界地図です。日本も含めた多くの先進国では90%以上の人々が銀行口座を保有するのに対し、アフリカ諸国や東南アジア諸国では40%を下回る国もあります。国によって基礎的な金融サービスへのアクセスに差があることがここからは窺えます。
また、「金融排除」に直面している20億人のうちの6割弱が、日本に住む私たちに身近なアジア地域の人々です(図表2参照)。例えば、インドでは約4.2億人もの人々が基本的な金融サービスを受けられていません。さらにパキスタンやカンボジア、ミャンマー、ベトナム等では、6割以上の人が銀行口座を持っていません(図表3参照)。95%以上の人が銀行口座を持つ日本とは違う光景が、同じアジアの数か国では広がっているのです。
お金を借りられない貧困層が抱える問題とは?
基本的な金融サービスを受けられないと、どのような問題が生じるのでしょうか? まず、「お金が必要な時に借りることができない」ということがあります。途上国では農業に従事する人々が多く、収入を増やすために生産性を高めるには、農機具を購入したり種や肥料を購入したりすることが必要です。健康的な生活を送るために、屋根のある衛生環境の良い家に住むことも重要です。子供がいれば、教育費等の一時的な資金需要も発生します。災害や病気、事故等に備えるためにもお金は必要です。しかし、お金を借りられなければ、これらのこともできなくなります。 さらに、金融アクセスが乏しい人々は仕方なく村の高利貸にお金を借りてしまうという問題も少なくありません。高利貸の要求する金利は年率数百%にもなることもあります。事業を始めたとしても利益のほとんどが高利貸の手に渡ってしまう可能性があり、これでは借り手の生活は一向に改善されません。 このように、「金融排除」にあることから生活を豊かにするための資金を手に入れられず、貧困からなかなか抜け出せない人々が途上国には少なくないと言われています。このことを背景に、様々な政府機関や国際機関、民間団体等は、「金融排除」に対して貧困層が必要とする金融サービスを利用できる状況のことを「金融包摂(Financial Inclusion)」と呼び、実現に向け動いています。その一つの仕組みが「マイクロファイナンス」なのです。
参考文献
- World Bank, ”Global Findex 2014”
- 岡本真理子・粟野晴子・吉田秀美(1999)『マイクロファイナンス読本』, 明石書店