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世界には、金融サービスを受けられない人々が20億人いる
マイクロファイナンス(Microfinance)とは、貧困層や収入の低い世帯向けに提供される金融サービスの総称であり、名前の通り、金額が小規模なものを指します。
貧しい人々に小口の融資や貯蓄、保険などの金融サービスを提供することを通じて、彼らの農業や自営業の運営に役立て、教育の改善や病気・災害などのリスクへの対処を可能にし、貧困の克服と自立を支援することがマイクロファイナンスの目的と言えます。
マイクロファイナンスは、もともと、小口融資を通して貧困層をサポートするマイクロクレジット(Microcredit)が中心でした。1970年代にラテンアメリカやアジア諸国からこの金融サービスが広がり、多くの貧困者が非合法な高利貸しへの依存から抜け出したと言われています。現在は、約1,400の金融サービス提供者が1,060億ドル(約10兆円)もの貸し出しを行っており、借り手数は約1.3億人にのぼると言われています(図表2)。
この数字はマイクロファイナンスのデータベースであるMix Marketに報告されたものに限定されており、実際はより多額の融資が行われていると思われます。
マイクロクレジットを主なサービスとしていたマイクロファイナンスですが、貧困層がその他の様々な金融サービスも必要としていることから、貯蓄や保険なども提供するようになります。時代が進むに連れ、マイクロファイナンスはマイクロクレジットだけを指すものではなくなるのです。
2014年時点では、マイクロファイナンス機関(マイクロファイナンスを行う機関)の半数以上が貯蓄・保険サービスを提供しています。さらに、教育や起業、女性の社会進出支援など、非金融サービスを提供することで包括的に貧困削減を目指す機関が一定程度あるのも、注目すべき点です(図表3)。
マイクロファイナンスにはどのような特徴がある?
マイクロファイナンスの特徴の一つは、持続可能性の高さです。
ボランティア活動は人材や資金不足の問題から、持続可能な活動になりにくことがあります。
一方で、マイクロファイナンスは、貧困削減や金融アクセスの提供を行うだけでなく利潤も追求するので、継続性が期待できると言えるのです。例えば、小口の融資であれば、通常は融資を行うコスト(人件費や情報管理のための設備投資費、事業を行うための固定費等)をまかなうことができる貸出金利を設定し、利潤を得られるようにしています。 また、マイクロファイナンス機関の顧客との接し方が、通常の商業銀行と異なることも特徴です。
例えば、多くのマイクロファイナンス機関では各地域の顧客が集まるセンターミーティングを毎週開催し、そこで融資の回収や金融教育を行うなど、貸し倒れを少なくするための工夫をしています(図表4)。
さらに、毎週貯蓄を行うルールを設けることで、資産形成や不測の事態への対応力の強化を図っている例も少なくありません。 普通の融資を受けることが困難な貧困層を対象としているマイクロファイナンスは、リスクを引き下げつつ事業の持続可能性を担保するため、このように様々な工夫をしていると言えます。
図表4:センターミーティングの風景
参考文献
- Convergences, “Microfinance Barometer 2016” http://www.convergences.org/wp-content/uploads/2016/09/BMF-EN-FINAL-2016-Version-web.pdf
- 岡本真理子・粟野晴子・吉田秀美(1999)『マイクロファイナンス読本』, 明石書店