Living in Peaceは2022年11月、設立15周年を迎えました。
それぞれに仕事などの本分を持つ多くのメンバーが、真に平等な機会のある社会の実現に向けて力を合わせてきた15年間。
私たちはそのビジョンにどれだけ近づくことができたのか、まだできていないこと、この先取り組んでいかなければならないことは何なのか――。
団体の創設者である慎泰俊と、その意志を引き継いで2018年から代表理事を務める龔軼群、中里晋三が、Living in Peaceのこれまでとこれからについて語り合いました。
※ 本記事は2023年5月に発刊されたLiving in Peaceの『アニュアルレポート2022』からの抜粋記事です。アニュアルレポートはHPより全文をお読みいただけます。
事業規模も質も大きく変化
ーー創設以来掲げているビジョン「すべての人に、チャンスを。」に向かって、Living in Peaceが前進してきた手応えはありますか?
慎 大きなビジョンなのでまだまだするべきことはありますが、粛々と成長して、着実に前に進んできたと感じています。事業の規模もメンバーの数もだいぶ増えた。10数人程度だったのが、今は160人ほどです。正直、ここまで成長するとは予想していませんでした。
中里 規模に加えて、活動の質的にもどんどん成長してきたと思います。たとえば、児童養護施設の建て替え支援から始まったこどもプロジェクトは、こども食堂や里親支援など多岐にわたる事業を行うようになった。
こどもたち、そしてこどもに関わる支援者の方々と、以前よりも密接に関われるようになった手応えを感じています。
龔 私も、多くのメンバーの力で、ビジョンに向かって前進できていると思います。そして、前進するために、時代に合わせて活動を変えてきたという実感があります。マイクロファイナンスプロジェクトが、ファンドの組成や管理だけでなく、気候変動により困窮する農家への支援事業にも力を入れているのはその1つ。
また、日本にで暮らす難民の方々の就職活動のサポートなど、行政や企業だけでは行き届かない支援にチャレンジできたのがうれしいです。
団体名に込めた平和への願い
慎 Living in Peaceを創設したとき、ビジョンを実現するために、社会人が本業を他に持ちながら社会貢献をするモデルを定着させたいと思いました。というのは、僕は、世界を変えるには、1人の取り組みではなく大勢の人が力を合わせ、少しずつ自分の身の回りから変えていく必要があると考えているからです。
社会の風潮の変化に後押しされたのもありますが、Living in Peaceは「プロボノは当たり前」というライフスタイルの変化にも貢献できたのではないかと思います。
中里 僕個人の感覚としては、「プロボノは当たり前」という想いの裏には、「日本全体の停滞や後退に対抗する足場、社会について自分なりに考えて行動する足場がほしい」という気持ちがあるのだと思います。
そして、Living in Peaceは、入会する人たちに対して、その足場をブレずに提供できてきた感じはしますね。
慎 格差拡大や環境問題などの社会課題に対してアクションを起こす人は増えている印象だし、希望を感じます。一方で、ウクライナ侵攻や台湾有事など、きな臭い世の中になってきていることに危機感があります。平和が脅かされているのをひしひしと感じますね。
龔 今こそ、Living in Peaceという団体名そのものが大切ということですね。 団体名は、慎さんが日本国憲法の前文を参考に考えたのですよね。
慎 「われらは、全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」に由来しています。確かに、今だからこその意味がある気がしますね。平和のためにできることをたくさんしなければならない、という想いはより強まっています。
中里 平和という言葉が団体名に込められているって誇れることですよね。メンバーや活動内容が変わっても、団体名は最後まで残り続けるだろうし。
僕は、物理的に平和が脅かされることに対してだけでなく、心の平和を守る活動にも力を入れたいです。社会に生きるすべての人がきちんと心の平穏を持てていれば、争いごとや暴力は防げると思うんです。
活動で得られる経験を糧に
ーー今後はLiving in Peaceとどのように関わっていきたいですか? また支援してくださっている皆様へのメッセージもお願いします。
慎 僕が考える退任した創業者のするべきことは、「見守る」と「しゃしゃり出ない」の2つ。これを徹底します。メンバーや寄付者の方が求めたら出ていきますが、それ以外のときは静かに見守ります。龔さんと中里さんの2人が代表なら大丈夫だろうって確信しているので!
龔&中里 本当ですか?どの辺が!?
慎 Living in Peaceに対する想いなどいろいろありますが、1つはきちんと継続する力ですかね。代表をお願いするときに僕が想定していたワーストシナリオが、2年ごととか頻繁に代表が変わること。トップがしょっちゅう変わる組織は危ういと思っているので、少し心配していました。
でも、2人はもう4年もの間、全力で続けてくれています。「代わりのきかない人間なんていない」という僕のアイデアは確信に変わったし、Living in Peaceは自分なしでもこの先前に進み続けるだろうなと思います。創業者がいなくなっても続くかというのが組織の1つの勝負どころで、そこは完全に乗り越えたと、支援者の皆様にも自信を持ってお伝えできます。
龔 ありがたい言葉と噛み締めつつ、私も後輩育成に力を入れていきたいと思います! 代表を務めて改めて思うのは、Living in Peaceには本当に多様な人が集まっていること。大学生からリタイアされた方まで年齢層も幅広いし、国籍もさまざま。
このような多様な人たちがプロボノで社会課題に取り組むという組織は、日本ではまだまだユニークだと思います。こんな私たちに共感して支援くださっている方に心から感謝したいです。これからもいろいろ挑戦していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
中里 メンバーの原動力は、活動を通じて初めて出会う人たちがいるなど、Living in Peaceで得られる経験の新鮮さだと思います。コロナ禍でオンラインでできる業務が増えたのを1つの学びにしつつ、メンバー同士がリアルに会う、現場に実際に足を運ぶといったオフラインのコミュニケーションにも力を入れたいですね。
やはり、直接会って話すという経験からしか得られないものはあると思うので。そして、支援者の方々に出会うという経験もかけがえのないものです。「お金をいただいて報告」という事務的なものではなく、今後はもっと血の通った関係を築いていけたらうれしいです。
Living in Peaceが、メンバーだけでなく、支援者の方々にとっても、何か意味のある新たな経験を提供できる場に成長できたらいいなと願っています。