Living in peace マイクロファイナンスプロジェクト Non-Financial事業で定期開催している「気候変動と貧困を考える勉強会」の第2回の内容をご紹介します。
この勉強会はマイクロファイナンスプロジェクト Non-financial事業のメンバーが立ち上げた活動です。環境問題に起因する貧困への理解を深めることで、これらの課題に対する具体的なアクションを起こすための土壌を作ることを目的としています。(※勉強会開催の背景はこちらの記事をご覧ください。)
第2回勉強会のテーマとして「海面上昇による影響」を取り上げ、気候変動がもたらす海面上昇の影響について考えていきます。
コンテンツ
- 海面上昇と地球温暖化
- これまでの海面上昇の記録と実際
- 海面上昇による影響
- 今後の見通し
- 私たちにできること
海面上昇と地球温暖化
最近よく耳にする地球温暖化。地球の面積の7割を占める海に対する影響も大きいことは容易に想像できると思います。
さて、海面上昇とはどういうことでしょうか?
海面上昇とは海水が温まって膨張したり、大陸の氷床などが融解することで、海面が上昇する現象のことです。
具体的には、
・海水温の上昇に伴い海水の体積も熱膨張する
・南極大陸などの氷床が溶けて海水の量自体が増える
というような事態が起こっています。
その原因はというと、やはり「地球温暖化が関係している」ということはすでに多くの方が認知してきているのではないでしょうか。
これまでの海面上昇の記録と実際
海面上昇などの調査は、IPCC 第 6 次評価報告書(AR6)第 1 作業部会(WG1)報告書で公表されています。
報告書では、以下のようになっています。
世界平均海面水位は、1901~2018 年の間に 0.20m 上昇。平均上昇率は、1901~ 1971 年の間は 1.3mm/年だったが、1971~2006 年の間は 1.9mm/年に増大し、2006~2018 年の間には 3.7mm/年に更に増大した(確信度が高い)。
少なくとも 1971 年以降に観測された世界平均海面水位の上昇の主要な駆動要因は、「人間の影響であった可能性が非常に高い」と記載されています。
さて、
皆さん、は2021年に開催された「COP26」にて、南太平洋の島国ツバルの外相が行った演説を覚えていますか?
スーツ姿で膝まで海水につかりながら、海面上昇で水没が懸念される国の現状と気候変動への対策を訴えた演説は非常に強いインパクトを私たちに与えました。
ツバルをはじめ海抜の低い島国では、既に海面上昇による被害は発生しています。畑や井戸に海水が入り込み、作物や飲み水の確保が難しい状況となっているのです。
ツバルでは、2002年の7月からニュージーランドへの移民計画が始まっていて、ツバルの政府は「環境難民」であると国際社会に訴えています。
出典: 国立環境研究所 地球環境研究センター 「海面上昇とゼロメートル地帯」,2015
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)「1ー6 海面上昇の影響について」
IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 暫定訳(文部科学省及び気象庁)
海面上昇による影響
海面上昇による影響によって、海岸浸食、高潮・高波・異常潮位などの沿岸災害の激化、沿岸湿地喪失などによる生態系への被害が予測されています。陸地が浸水すると、農業用地では塩分を含む海水の流入による「塩害」が起き、沿岸部では作物を育てることが難しくなります。
気候変動に起因する自然災害などによって、故郷を追われる人のことを「気候難民」と呼びますが、海面上昇によって気候難民の数が大幅に増えることが予想されています。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2010年以降に発生した気候難民の数は2150万人に上ると発表。 また、オーストラリアのシンクタンクは、2050年までに少なくとも12億人が居住地を追われる可能性がある(※1)としています。
出典:ECOLOGICAL THREAT REGISTER 2020
また、こちらは稲作地帯であるメコンデルタにおける海面上昇の農業への影響を示した将来モデルです。
海面上昇が引き起こす塩水遡上がベトナム・メコンデルタのコメ生産へ及ぼす影響を明らかにするためにこのモデルが開発されています。そのモデルによって示された検討の結果、三期作が可能な地域の面積は31%から6%に減少すると推定されています。
今後の見通し
すでに海面上昇によって生活に影響がでている地域がありますが、今後はどうなるのでしょうか?
IPCC 第 6 次評価報告書(AR6)では、
世界平均海面水位が21世紀の間、上昇し続けることはほぼ確実である。
と明記されています。2100年までに起こる可能性がある海面水位の上昇量は「非常に低い」シナリオでも50cm程度まで、「非常に高い」シナリオでは1m近くまで上昇すると予測されています。
海面上昇はその後も数百年から数千年にわたって継続すると予測されています。海面上昇の要因は地球温暖化。私たちは地球温暖化の大きな要因である温室効果ガス削減について知恵を出し合い協力し合うことで海面上昇も防ぐことができるかもしれません。
出典:IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 暫定訳(文部科学省及び気象庁)
私たちにできることは?
今回の勉強会で様々な資料をメンバーで供覧し、現状と今後の見通しについて知ることができました。
・気候変動、温暖化による海面上昇が進んでいる
・主に沿岸部(とりわけアジア、太平洋地域)での影響が大きい
・様々な気候変動要因が複雑に絡むが塩害により、収入減による貧困や飢餓のリスクに直面する恐れがある (発展途上国で顕著に増加するのでは)
人的要因であることが間違いないという結論が出つつある今、産業の発展とこれらの解決策を同時に進めていく必要がある、という意見が多くみられました。
発展途上国、沿岸部など経済的に脆弱な国の方々がこれらのリスクに対応するのは容易ではありません。気候変動、海面上昇に対応するためには灌漑施設の整備や品種転換のための改良費用などが必要だからです。
このような事態に対して、
「資金援助や技術協力を実現するような国際的な枠組みの整備が重要ですね。」
「気候変動による環境変化に対応した生活、経済基盤を作るための教育もやはり大事ではないか。」
と様々な意見が出てきました。
今回は海面上昇という側面から、気候変動による実態を見てみました。このような事態に何ができるのか。有効な解決策はすぐには出てきませんが、皆で考え小さなことからでも始める第一歩になればと、今後も有志勉強会を続けていきたいと思います。
※勉強会はあくまで有志メンバーによる学びとディスカッションの場であり、勉強会の様子として紹介した 本内容は記載データについての真偽、見解を述べたものではございません。
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