一見して自分と遠く隔たったものから、忘れがたい示唆を受けることがあります。
1609年にヨハネス・ケプラーが発表し、「ケプラーの法則」として知られる諸定理は、夜空のはるか向こうで音もたてず運行する惑星が、太陽をひとつの焦点とする楕円軌道上を周遊していることを明らかにしました。
途方もない時間、太陽をめぐって変わらぬ運動を続けてきた惑星は、いつも変わらぬ距離にいたわけではなく、絶えず太陽からの距離を変え、運行の速度を緩め速めしながら、そのことで安定した軌道を描いていたのです。
何らかの対象と交わしあう私たちの関係も、お互いの距離が一定不変であればあるほど、その硬直した距離がはらむ危うさを感じないでしょうか。
それが安定した心地よいものであるには、ときに近づき、ときに遠のき、ときに速め、ときに遅めるという変化のなかで、その弾力的なリズムが大切であるように思います。
この梅雨のあいだはアジサイの花(房)が私たちをさまざまに愉しませてくれました。しかしその味わいも、植物観察をするがごとく至近距離に立ち止まっているばかりでは、その風物詩たるゆえんの美しさを得心できないでしょう。
傘を差しながら先を急ぐ道すがら、雨にけぶる向こうからアジサイの紫や青、紅の花がおぼろに浮かぶ、たとえばその距離と歩速においてはじめて出会える美しさがあります。
そしてそれを看取った目には、つぎに触れられる距離でまじまじと眺めるアジサイが、きっとまた違ったものと映るはずです。
さながら惑星の運行のように相手との距離を柔軟に図りつつ、全体としては変わらぬ楕円を描くように向かっていく対象への関わりの意味は、個々人のあいだであっても変わりません。
さらには、これまでの歩みを振り返ったとき、私たちLiving in Peaceが外から現場へと関わっていくさいに(その必要性への応答から)決してぶらさなかった何よりのものが、そうした構えだったとも感じています。
現場の内と外とを往還するなかで、内なる目を得、現場の外にある資源を携えて、新たな創発を生み出す触媒となること。
現場に根差しつつ、太陽をめぐる地球のように、地球をめぐる月のように、その動きのなかでその焦点を照らしかえすパートナーであり続けたいと思っています。
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