認定NPO法人Living in Peaceは2022年3月26日(土)、「にしなり★つながりの家」設立を目指すクラウドファンディング『「おかえり」でつながり合える地域の実家を!西成こども食堂の挑戦』の協賛企画として、オンラインイベントを開催しました。
イベントでは、当事者、実践者、研究者という異なる立場から4人のゲストをお迎え! それぞれの立場から、「こどもの育ちを支えるつながり」をテーマにお話しいただきました。
今回の記事では前編に続き、イベント後半の様子を一部抜粋してお届けします!。
【登壇者(50音順)】 川辺康子さん(西成チャイルド・ケア・センター) 藤田琴子さん(いちほの会/青草の原) 村上靖彦さん(大阪大学) 渡邊洋次郎さん(リカバリハウスいちご)
「誰でも来られる」居場所でつながる
村上:川辺さんの「つながりの家」と藤田さんの「れもんハウス」には共通点があるなと感じました。いずれも非常に重要なことですが、子どものニーズに合わせて作られたこと、誰でもアクセスできること、親子を一緒に支えること、そして自己責任論を克服しようとしていること。
藤田:誰でもアクセスできるところはポイントですね。
とはいえ、「誰でも」と言いながら「誰でも」でなくなることもあります。
たとえば、れもんハウスにはお酒をおいています。お酒があるから来たいと思う人もいれば、アルコール依存のある人には来づらいでしょう。
ひとつの場所で実際に全てを包括することはできません。でも、ある場所でつながった人同士が、別の場所でもう一度つながって、関係性をつむいでいくことができます。つながる場の選択肢が増えたらいいと感じています。
渡邊:自助グループも「誰でも来られる」場です。共通項は「お酒をやめたい」だけ。年齢、性別、国籍、どんな差異も気にしない。だからこそ、私は安心してそこにつながることができました。もし患者と医者なら、患者という役割を下りてしまえば関係は続けられない。
そして、そのような場に出会って、人とのつながりのなかで、それまで私のなかですっぽ抜けていた生きるための土台みたいなものが育まれました。
「ルールがない」からできること
村上:一方で、母子生活支援施設と川辺さんの取り組みには、ひとつ大きな違いがあるかもしれません。川辺さんのところでは徹底してルールをつくらないんです。
私が行くようになった当時のこども食堂では当初「いただきます」をみんなで言う習慣すらなかった。そしておそらく、そうでなければ来られない親子がいます。
藤田:母子生活支援や行政も、さらに多くの人の利用に向けて許容範囲を広げる流れが必要と感じています。
中里:川辺さんと藤田さんの取り組みは、ある意味で背中合わせになっていると感じます。施設を始めとする公的な支援と、こども食堂という市民的な運動の取り組みが、各々の枠組みを広げながらつながっていく未来が見えました。
渡邊:自助グループでもルールはありません。たとえば献金をするような場合に、窃盗の前科がある人にもお金を預けたりする。しかしそんなルールがない場で初めて、人が人のために動くことを感じられました。逆に言えば、信頼があるからこそルールがない。良心に任せきったかたちです。
また、自助グループでのイベントでは、一緒に食事をしたり寝たりする時間があります。人といる居心地の良さを、理屈ではなくそのような体験を通じて自分のものにできました。
そういう場に出会えた人もいれば、出会えなかった人もいます。居場所を地域で作って誰もがそうした場に出会えれば、すごくいいことですね。
村上:市民的な動きが、この20年で盛んになってきました。浦河べてるの家、アルコホーリクス・アノニマス、ダルクもそう。困難を抱えた人たちがサポートし合い、コミュニティを作る活動は現代の流れです。
いま私たちが生きているのは、自己責任論が根強い競争社会。けれどもそのカウンターカルチャーとして現れた、誰でも受け入れられる居場所をつくる動きがこれからの社会を作っていくと、強く思っています。
イベント第2弾のご案内!
紙幅の都合上割愛させていただきましたが、他にも「こどもが地域から分離されることの問題」「大人が弱さを見せられることの意義」などにも話が広がり、つながる場としての居場所の重要性が多面的に語られました。
登壇者の方々、ご視聴いただいたみなさま、ありがとうございました!
オンラインイベントは第2弾も開催いたしました。ぜひご視聴いただけますと幸いです。