ミッドナイト・トラベラー(2019)
【あらすじ】2015年、映像作家のハッサン・ファジリはタリバンから死刑宣告を受ける。制作したドキュメンタリーが放送されると、タリバンはその内容に憤慨し、出演した男性を殺害。監督したハッサンにも危険が迫っていた。彼は、家族を守るため、アフガニスタンからヨーロッパまで5600kmの旅に、妻と2人の娘たちと出発することを決意する。そしてその旅を夫婦と娘の3台のスマートフォンで記録した。
予告編を見ただけでも緊迫感が伝わってきます。スマートフォンで家族の亡命の道中を撮影した、当事者による斬新なドキュメンタリー映画。子どもの表情が切ないです。
上映館が少なく、なかなか見るのが難しいかもしれませんが…機会があれば見たい作品です。
ヒューマン・フロー 大地漂流(2019)
次に紹介するのは艾未未(アイ・ウェイウェイ)監督が、23か国40か所の難民キャンプを巡って取り収めたドキュメンタリー作品。とりあえず予告編を見てください!艾未未監督は中国の現代美術家でもあり、さすが映像の見せ方が上手いなあ、と思います。
眠りに生きる子どもたち(2019)
【あらすじ】難民受け入れ大国であるスウェーデンに逃れてきた家族、そして、小さい子どもたち。祖国での心身的トラウマ、滞る難民申請、そして本国送還への恐怖から、昏睡に近い状態で生きる子どもがいる。彼らは辛い現実から逃れるあまり、ある日突然、食事をしなくなり、反応を見せなくなり、ついには”眠り”に落ちてしまう。スウェーデンで多発している、原因不明の難病とたたかう家族に密着した、短編ドキュメンタリー。
すやすやと寝息をたて、ベッドに横たわっている幼い女の子。パッと見る限り、ただ寝ているだけに見えますが、その鼻にはチューブがつけられ、両親の呼びかけにも全く反応を見せません。
”ダリア、7歳。5ヶ月間、反応なし”
”あきらめ症候群”が最初に確認されたのは1990年代後半。2003年頃から症状を訴える患者の数は増加しており、今では数百人の”祖国から逃げ延びてきた難民の子どもたち”がこの難病と闘っている様です。
原因は依然として不明。また、この病の多くはスウェーデンで確認されており、その他の国では数件しか報告されていない様です。
https://note.com/lip_refugee/n/nfd95298249ba
Netflixオリジナルの短編ドキュメンタリー映画です。
世界や大人の事情に翻弄される子どもたちへの影響は計り知れず…
僕の帰る場所(2018)
【あらすじ】東京の小さなアパートに住む、母のケインと幼い二人の兄弟。入国管理局に捕まった夫アイセに代わり、ケインは一人家庭を支えていた。日本で育ち、母国語を話せない子ども達に、ケインは慣れない日本語で一生懸命愛情を注ぐが、父に会えないストレスで兄弟はいつも喧嘩ばかり。ケインはこれからの生活に不安を抱き、ミャンマーに帰りたい想いを募らせてゆくが——
「僕の帰る場所」は、ドキュメンタリー映画ではありませんが実話をもとにした映画です。東京に暮らすミャンマー人家族のお話です。
ミナリ(2020)
次に紹介する作品も移民一家を描いた映画です。
【あらすじ】1980年代、農業で成功することを夢みて韓国系移民のジェイコブは、家族とともにアメリカ、アーカンソー州の高原へ引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、不安を抱くが…。
まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、孫のデビッドと一風変わった絆を結ぶ。しかし、農業は思うように行かず…。
「ミナリ」は韓国からアメリカへ移住した家族の物語。とにかくおばあちゃんが元気いっぱい!おばあちゃん役を演じたユン·ヨジョンはこの作品で第93回アカデミー賞 助演女優賞を受賞しています。
移民・難民がテーマの映画というと、どうしても暗いような重苦しいようなイメージを持たれる方もいると思いますが、次に紹介するのは難民・移民をテーマにしながらも笑えて泣ける、そして考えさせられる5作品です。
はじめてのおもてなし(2016)
暗くて重たくて色がない…というような移民・難民映画のイメージが覆るようなカラフルで明るいコメディ映画です!リラックスして見たいときに、おすすめです。
【あらすじ】ミュンヘンの閑静な住宅地に暮らすハートマン家。教師を引退して生き甲斐を見失っていた母アンゲリカは、夫の反対を押し切り、突然、難民を受け入れると宣言。ナイジェリアから来た青年ディアロを自宅に住まわせる。家族は、はじめてのおもてなしに張り切るが…
希望のかなた(2017)
次に紹介する作品も同じヨーロッパが舞台の映画です。
【あらすじ】シリア人の青年カリードは内戦が激化する故郷を追われ、生き別れた妹を捜すうちにヘルシンキに流れ着く。内戦で全てを失ったカリードにとって、妹を捜し出すことだけが唯一の望みだった。フィンランドでもヨーロッパ全体を悩ませる難民危機の影響か、難民申請を却下され、いわれのない差別や暴力にさらされるカリードだったが…
優しくて福祉先進国のイメージがあるフィンランドですが、近年、国民の中で「自分達は高い税金を払って福祉の恩恵を受けているけど、ちゃんと税金を払っていない移民の人たちにまで高福祉を提供するのはどうなんだ」という声も上がっており、移民政策も変わってきているようです。この作品にはそんな背景もあるんですね。
個人的には犬のコイスティネンが可愛すぎて、ずっと目で追ってしまいました…。
グッドライ~いちばん優しい嘘~(2014)
【あらすじ】1983年アフリカ大陸のスーダンで内戦が始まり、数万人の子供たちが両親の命と住む家を奪われた。2000年になりアメリカとスーダンが協力し、難民キャンプで育った3600人の若者たちを全米各地に移住させる計画を実施。突然、自由の国への切符を手渡された若者たちと、彼らを受け入れたアメリカ人たちとの間に、いったいどんなドラマが起きたのか──?
「スーダンのロストボーイズ」ってご存知でしょうか。
第二次スーダン内戦時(1983~2005)に住んでいた場所を追われ孤児となった子どもたちがいました。「ロストボーイズ」は彼らが避難生活を送っていた難民キャンプで職員たちからそう呼ばれていたことに由来します。この作品は「ロストボーイズ」と呼ばれた彼らを全米各地へ移住させるという実際に行われた計画を元にした映画です。みんなで食べているピザがすごく美味しそうです…。
最強のふたり(2011)
【あらすじ】パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の男性と、介護役として男に雇われた刑務所を出たばかりの黒人青年の交流を、笑いと涙を交えて描く実話がもとのドラマ。まったく共通点のない2人は衝突しあいながらも、やがて互いを受け入れ、友情を育んでいく。
言わずと知れた有名な作品ですよね。2019年にはハリウッドリメイク版が製作されました。
THE UPSIDE 最強のふたり(2019)(ハリウッドリメイク版)
おおまかな話の内容はフランス版と同じですが、アメリカとフランスで見比べてみるのも面白そうです。
おおまかな話の内容はフランス版と同じですが、アメリカとフランスで見比べてみるのも面白そうです。
UNHCR難民映画祭
最後になりますが、UNHCRは2006年から毎年、移民・難民に関する映画を扱った映画祭を開催しています。今年の開催日時は2021年10月1日(金)~2021年11月14日(日)。視聴料(2,000円)を支払うと、期間中は作品が見放題となります。
今年は以下の5作品が配信されます。全作品、日本初上映だそうです。
・シリア・ドリーム ~ サッカーにかけた未来 (Captains of Zaatari)
・さまよえる魂の声 ~ あるロヒンギャの物語(Wandering, A Rohingya Story)
・祖国を追われる人々、ロヒンギャ(EXILED:THE ROHINGYAS)
・カオスの行方 ~ 安住の地を求めて(It will be chaos)
・シャドー・ゲーム 〜 生死をかけた挑戦(Shadow Game)
秋の夜長に映画三昧してみてはいかがでしょうか!
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執筆:須永真由(Living in Peace)