
私たちLiving in Peaceは、児童養護施設で生活する中学生から高校生の子どもたちに、世の中の様々な仕事を知ってもらう機会として、キャリア教育「おしごとリップ」を行っています。
関西おしごとリップ
年が明けて間もない1月12日(日)に「おしごとリップ」を開催し、生駒学園と高鷲学園から11名の子どもたちが参加しました。
今回は「自然の恩恵を使う仕事」。講師は、有機農作物の普及にかかわる仕事をされている菅野奈穂さんです。
菅野さんが子どもたちに伝えたいメッセージは2つ。1つ目の「食べることは生きること。あなたの体は食べたものでできている」についてのお話からはじまります。
一度は絶滅したトキの再生と『田んぼ』の重要性を関連づけた話題を皮切りに、生き物を育む農法や、体に影響を与える可能性のある農薬の話、また腸内細菌が体や脳の調子を保つために重要な働きをしていること。そして毎日少しずつ入れ替わる人体の細胞をより健康なものにするためにも、原料となる食べ物が重要であることなど、食の大切さを理解するための知識を子どもたちにも分かりやすくお話しいただきました。
ワークの時間は、「体験」と「思考」の2つのワークを行います。体験ワークでは、「体の基礎をつくるお米とお味噌汁を作って食べてみよう」をテーマに、有機のお米とお味噌、お味噌汁の出汁や具材を菅野さんに用意していただきました。衛生面に十分配慮したうえで、講義前に炊飯しておいたお米でおにぎりを3種類(玄米、7分づき米、白米)と、各自でチョイスした具材を入れた味噌玉をつくります。


玄米を食べたことがない子どもが、はじめての食感に驚いたり、出汁の粉末を入れずに、味噌本来の味を感じたいとチャレンジする子どももいたり、それぞれの味わいを楽しみます。また、ワークに入る前に安心・安全な食についての知識をインプットしていたことで、体によいものを取り入れることの重要性を、より体感できたように感じられました。
思考のワークでは、「米農家になりきって、有機米を広める方法を考えよう」をテーマに考えてもらいます。同じ世代の子どもたちに、農家さんとの交流イベントに参加してもらうという案や、子どもがいるお母さんたちに、学校の懇談会の場で試食会を開催するという案、なかには家族に健康になってもらいたいので、自分が食材の買い物役を申し出て、有機米だけを買うようにするというアイデアを出す子どももいました。

伝えたいメッセージの2点目、「自分の志を大事にしよう‼」については、菅野さんのキャリア観のなかでお話いただきました。
中学時代のBSE研究への取り組み、大学時代の有機農家さんとの出会い、農水省への就職から現在のオーガニック給食を広めるNPOへの転身と、「食で人を健康にしたい」という志を持って道を進んできた人生を振り返ります。
また、農水省でのハードワーク、不妊治療での深い悩みを経て、ワークライフバランスの取れた現在の働き方を選んでいることもお話いただき、時代とともに働き方の変遷が見られる今、「働き方は自由だ!志を大切にできると道が選びやすい」と、ご自身の経験に基づいて力強く語られました。

終了後のおしごとメモには、講義を通して感じたたくさんの想いが書かれており、講師のメッセージが子どもたちに伝わったことを嬉しく感じました。一部のみ抜粋してご紹介いたします。
- 自分の体は自分の食べたものでできているから、食べ物に気を使ってみようと思った。
- 食べ比べを通じて、自分にかかわる食生活が大切なんだと実感した。
- まだ将来の夢はないけど、健康に良いものを誰かに広める仕事っていいなと思った。
東京おしごとリップ
2025年1月19日(日)、新年最初のおしごとリップを開催し、10名の子どもたちが参加しました。
今回のテーマは「お金の教育」です。
児童養護施設で暮らす子どもたちは、基本的には18歳になると同時に施設からの退所を余儀なくされます。そのため、進学や就職するにあたって生活費や卒業までの学費を自身で工面する必要があり、早い段階で収支バランスを身に着けることや、お金に関する知識を身に着けることが重要です。お金の知識を身につけることで、子どもたちがお金を上手に使い、自分らしく生きられるようにという願いを込めて、LIPの「お金の教育事業」メンバーを講師に迎え、以下の3つのセクションで講義を行いました。
1.自分にあったお金の使い方を考えよう
- 施設在所中では身に付きにくい収入と支出のバランス感覚を養うことを目的に、支出のコントロールに焦点をあてた講義を実施しました。ワークパートでは、節約ポイントを考え、一定額に支出を抑えるワークを行いました。

2.お金の危ないワナ
- 本業が金融コンサルタントであるLIPメンバーが講師を務め、良い借金と悪い借金についての講義を行いました。リボ払いの危険性や借金に関するミニクイズを通じて、安易な借金のリスクを実感してもらいました。また、近年問題視されている「ダークパターン」についても紹介し、注意喚起を行いました。

3.「信用」の大切さを意識しよう
- 「信用」と「信頼」の違いを説明し、信用につながる行動や失う行動について考えてもらいました。ワークパートでは、スマホ代金が支払えないシナリオをもとに、信用を失わないための工夫を考える演習を行いました。

<参加した子どもたちの感想> ※一部抜粋
- 今回お金に関する講義を受けて、どれも大切な内容だと思いました。これから大人になる中で分からないことが増えていくと思いますが、自分で勉強し、対策していきたいです。
- お金をつい使いすぎてしまうクセがあるので、これからは気を付けたいと思います。
- リボ払いの仕組みについて改めて理解することができました。高校進学後は、500円貯金を始めようと思います。
- 周りに流されず、自分なりのお金の使い方を心がけようと思いました。これからはさらに節約を意識して取り組みます。
- クレジットカードや後払い機能は、実際に使った金額が分かりにくいので、使いすぎないよう注意したいです。
- お金とは一生付き合っていくものなので、これからも良いお金の使い方を考え続けたいと思います。もし将来借金をすることがあれば、今日学んだ「良い借金」にあたるようなお金の使い方を心がけたいです。また、お金のトラブルに巻き込まれた場合は、「報・連・相」を意識して行動しようと思います。

私たちLiving in Peaceは、これからも子どもたちのキャリアに対する意識向上に少しでも貢献できるよう、キャリア教育「おしごとリップ」のプログラムを心を込めて届けて参ります。今後とも、皆さまのご支援を賜りますようどうぞよろしくお願いいたします。