設立以来16年間、Living in Peaceは「すべての人に、チャンスを」というビジョンの実現に向けてさまざまな課題に取り組んできました。
その間組織は大きく成長し、機会の平等を取り巻く問題も徐々に変化してきています。
組織としての求心力を高め、その力を最大限に発揮して、真に解決すべき課題と向き合うために、2023年、Living in Peaceは活動の具体的な方向を示すミッションステートメントを新たに策定しました。その策定をリードし、団体全体の舵取りをする経営企画チームのメンバーに、策定の経緯とこれからのLiving in Peaceが目指すものについて聞きました。
※ 本記事は2024年3月に発刊されたLiving in Peaceの『アニュアルレポート2023』からの抜粋記事です。アニュアルレポートはHPより全文をお読みいただけます。
Living in Peaceのミッションステートメント
目指すもの
機会の不平等に起因して困窮しているにもかかわらず、十分な社会的支援が及んでいない人たちが同じ社会の一員としてともに活躍できる世界をつくります
提供する価値
社会的認知に乏しい社会課題に着目し、社会に広く喚起、啓発するとともに、より多くの個人や団体がその課題解決に参画できる仕組みを創出します
事業のありかた
既存の枠組では解決が難しい社会課題に対して、本業・本分を別に持つ多様なメンバーの力を結集し、様々なステークホルダーとも協働して解決を目指します
組織力向上のためにミッションステートメントを策定
経営企画チームの役割についておしえてください
湖山 設立から 15 年が経ち、Living in Peace(以下、LIP)の活動範囲は大きく広がり、メンバーも 130 名を超す組織へと成長しました。これまではメンバーの想いと行動力を推進力としてボトムアップで活動を進めてきた面が強く、団体全体の統括は理事会が担っていました。しかし、これだけの規模になると数名の理事だけで団体が抱える課題を全てカバーすることが難しくなってきました。そこで、理事会をサポートし、幅広い課題について議論・検討を行うファンクションとして 2023 年初頭に経営企画チームを立ち上げました。
湖山勝喜 Katsuyoshi Koyama
Living in Peace 理事 経営企画チームメンバーマイクロファイナンスプロジェクト所属
本業:フィンテック企業・リスク管理
コロナ禍でたくさんの人が苦しんでいる中で何か人の役に立ちたいと思い、自分のバリューを活かして活動できるマイクロファイナンスプロジェクトに 2021 年 4 月に参加。自分自身や本業で接する人たちとは異なるバックグランドや価値観を持つ仲間とのディスカッションができること、あまり日が当たらないが重要な社会課題に関して理解を深め、実際に改善に向けて取り組めることにやりがいを感じている。
角田 立ち上げ当初は、プロジェクト単位で管理していた寄付金を団体全体で活用できるようにすることを目的としていました。ただ、チームの役割を議論するなかで、資金管理だけでなく、組織全体でのカルチャー醸成や人材の確保など、団体として取り組んでいかなければならない点が他にも見えてきたのです。そこで、アドバイザーの皆様からもご意見をいただきながら、団体の運営全般にスコープを広げることになりました。
湖山 せっかく同じ想いを共有する人たちが集まっているのに、活動がプロジェクトごとに閉じてしまうと、その人たちの力を最大限に活かしきれなくなってしまいます。すべてのメンバーが組織全体の視点で「すべての人に、チャンスを」というビジョンの実現を見据え、そのために必要な取り組みや新しい事業を推進していけるようにしたい。それが経営企画チームの目指すところです。
現在はどのような活動をしているのですか。
角田 マイクロファイナンス、こども、難民の各プロジェクトから数名ずつ、全部で 10 名弱のメンバーが集まり、3 つのグループで活動をしています。1 つは今回のミッションステートメントの策定を行ったカルチャー担当グループ。もう 1 つは現在実施している事業のインパクトを把握し、LIP の強みを最も発揮できる事業への選択と集中を検討するグループ。3 つめは、各プロジェクトから生まれる新規事業についてリソース配分などを全体で管理するグループです。
湖山 参画しているメンバーのバックグラウンドは、コンサルティング、人事、経営企画などさまざまです。いろいろな視点を持った人たちで意見交換をしながら、プロジェクトの間に落ちてしまうような課題を拾い上げるようにしています。
そうした活動の中で、どのような経緯でミッションステートメントを策定することになったのですか。
湖山 LIP には、「すべての人に、チャンスを」というビジョン、「機会の平等を通じた貧困削減」というミッション、団体の特徴を表す「社会のことも、私事(しごと)に」というタグラインがあります。メンバーはこれらを共有はしてはいるものの、実際の活動はそれぞれが所属するプロジェクトが中心で、また全員がプロボノでオンラインミーティングを中心に活動を進めているという性質からも、LIP という組織の全体最適の観点で意思決定や行動をすることが難しいという課題がありました。そのため、日々の活動の中で意識できるより具体的な指針が LIP という団体レベルで必要ではないかという議論から、ミッションステートメントの検討が始まりました。
角田 湖山さんがつくってくれたたたき台をもとにまずは経営企画チームのメンバーで草案を練り、各プロジェクトからメンバーを募って意見をもらいました。半年ほどかけて議論を重ね、 2023 年 10 月に確定しました。ただ、これは固定的なものではなく、今後も見直しを続けてブラッシュアップしていく予定です。
角田真理 Mari Kadoda
経営企画チームメンバー こどもプロジェクト所属
本業:メーカー・事業戦略
2021 年 9 月よりこどもプロジェクトで活動。おばあちゃんっ子だった幼少期に自分を見てくれる大人の存在の大切さと実の親ではない人のもとで育つことの難しさを知り、大学時代に学習支援に携わることで信頼できる大人・相談できる大人の存在の大切さを改めて実感したことが活動の原動力となっている。経営企画チームでは本業で新事業開発のサポートをしている経験を生かし、組織の力の最大化や新事業が生まれやすい環境づくりに取り組む。
策定にあたって苦心した点はどんなところですか。
湖山 誰に対して、何のために、どうやって支援を行うのかを明示する必要がありましたが、やはりプロジェクトごとに支援対象や方法は異なるので、そうした違いを超えて共通するものは何なのかを突き詰めて考え、言語化することが難しかったです。
角田 策定して終わりではなく、メンバーが実際に活動の中で意識してこそ意味があるものなので、みんなに「私事」として捉えてもらえるようになるまで浸透させることが次の課題です。ミッションステートメントへの理解を深めることを目的としたロングミーティングを開催するなど、浸透のための施策を進めています。
新たなミッションステートメントに沿った今後の活動への想いを聞かせてください。
湖山 メンバーのみんなに LIP をより好きになってもらい、帰属意識を高めてもらいたいですね。ミッションステートメントを意識して、自分の関わっている活動だけでなく団体全体をより深く理解することで、プロジェクトを超えた共通の良さや強みに気づき、そこから新たなコラボレーションが生まれれば、よりインパクトのある活動へとつながっていくと思います。
角田 メンバー全員が、LIP の活動を通して実現したい社会を描きながら事業を進めていけるよう にしたいです。メンバー自身が持っている活動へのモチベーションと LIP として実現したい姿が結びつくことで、組織の力を最大限に発揮できるようになるはずです。また、事業を評価する上では、各事業の巧拙や、さらに発展させるためにはどうすればよいのかを検討するための判断軸があることも大事。ミッションステートメントはそうした判断が必要になった時や困りごとが生じた時などに立ち返る指針にもなると思います。