Living in Peaceマイクロファイナンスプロジェクトは第二種金融商品取引業登録を保有するミュージックセキュリティーズ株式会社と協業し、アフリカのケニアでの支援を目指して2022年6月にLIP-HAKKIケニアファンドを組成しました。
本ファンドは、株式会社HAKKI AFRICA(代表取締役:小林嶺司)への出資を通じて、ケニアの低所得層の人々が金融サービスにアクセスし、経済的に自立するチャンスを提供することを目指しています。※LIP-HAKKIケニアファンド事業概要はこちら
HAKKI AFRICAの2023期(2022.9~2023.8)が完了したタイミングに合わせてHAKKI AFRICA(以降、HAKKI) CEOの小林さんとLiving in Peace(以降、LIP)代表理事の龔にて対談(オンライン)を実施しました!
その模様について、前編、後編の2回に分けて皆様にお届けいたします。
※本記事は投資家向けレポートから抜粋しています。
龔:本日はよろしくお願いいたします。
今月号では小林さんの人物像に迫りたいと思うのでよろしくお願いいたします。
あれっ?前回(※)東京でお会いした時と比べてスリムになられた気がするのですが。
※2022年11月のイベントはコチラ
小林:実はそうなんです(笑)当時と比べると大分やせたと思います。ランニングをするようになり、先日はハーフマラソンにも参加しました。
またケニアではあまりやれることが無いので、現地人の間でもジムでの筋力トレーニングが流行っていて、私も始めました。
龔:LIPの創業者の慎も同じようなことを話していました。
慎さんもストイックに走る人ですが、小林さんもストイックですね(笑)。
他になにかマイブームはありますか?
小林:ケニアはイギリス領だったこともありゴルフ場がいくつかあって、3,000円くらいで回れるので友人と定期的に行くようになりました。
龔:小林さんはご自身の経営スタイルをどのように認識されていますか?
小林:私は広義な経営という観点では成功者に一定の法則があるとは考えていません。
一方、各事業単位で見たときには一定の型はあると考えています。適者生存ともいえるかもしれません。
その型でいうと私は自分を「びびり」な性格だと認識しています。
龔:「びびり」かはわかりませんが(笑)、前回初めてお会いした際に、非常に丁寧な方だなという印象を持ちました。
小林:石橋を叩いてさらにチェックして自分が納得してからでないと次に進まないタイプです。現在の事業でも一つずつ理詰めしていき120%の自信を持ってから次の一手に進んでいます。
昔は仲間を巻き込んで大きな事を言って、というタイプだったが、20代後半あたりから切り替わったような気がします。
なぜ変わったかというと、今いる事業やコミュニティにとって「慎重」という要素が必要だったからかもしれません。
一例として会計に関しては、社内で2種類のソフトでチェックして、その後社外でチェックして、公認会計士がチェック、経営陣がチェック、その後現地の監査法人。
今年はさらに日本側での監査法人チェックも加えた。1円単位でこだわっています。
龔:金融は特に信用が大事な業界であり、徹底的に細部まで突き詰める姿勢は投資家に対して重要なポイントだと思います。
外部だけでなく内部(社員)に対してもその姿勢は良い影響を与えているのかもしれませんね。
小林:確かにそれはありますね。
人種や価値観が異なる難しい組織運営が求められる中において、このような行動は
運営方針のメッセージとして伝わっていると思います。
HAKKIでは月間4~5000の会計データが発生しますが、その一部に対して私が社員に直接質問をしたりしている。不正や嘘は通用しないなというけん制になっている部分はあると思います。
龔:他のマイクロファイナンス機関からも「新興国ではどうしても一部のスタッフが不正を起こしてしまう現実はある」という話をよく聞きます。
それを発生させないためにトップが行動し、それが組織風土となり、不正の未然抑止に繋がっている部分はあるんでしょうね。
小林:私が尊敬する人物のひとりに株式会社カヤックの柳澤さんがいます。
鎌倉で唯一の上場企業。
人の能力を見抜くことが得意な方で、私が大学時代にご一緒させていただいて地道な努力に目をかけていただいた。その経験は非常に大きく、私も人に目をかけながら経営をしていくスタイルを目指したいと考えています。
龔:LIPでもマイクロファイナンス機関のデューデリジェンスをするにあたって、本当にしっかり運営しているか、抜き打ちで顧客の家に行ったりしていました。
それによって企業のリアルな姿見が見える。一つの失敗がより大きな影響を及ぼす金融には重要だと考えています。
小林:SMBC、北國銀行、新しく投資に参加した方々も現地に来て見ていただきました。
手前みそではありますが、HAKKIは現地でもあらゆる方面から評価が極めて高いと認識しています。
びびりな性格が幸いしていると思いますが(笑)、一つ一つ丁寧に隙を無くす努力をしています。スタッフが勤勉に働いている姿も見て投資家の方々にも認めていただけたと考えています。
龔:経営者は誰と働くかという点も重要かと思いますが、人材マネジメントについてはどのようにお考えですか?
小林:採用に関してはマネージャーに任せるという判断をしています。
一方で採用後のフォローは意識していて、先ほど話したようにデータチェックをする中で社員と話をし、求める社員集団に近づけていく努力をしています。
採用時はスキルを過大申告するスタッフも多く、仕事への姿勢も含めて多数採用して、働きを見て、良い人材を残していく、という戦術が正しいのではないかと考えています。
龔:HAKKIが求める人材はどのようなものでしょうか?
小林:嘘をつかないことですね。
仮にミスをしてもちゃんと報告してくれる誠実さを持っていること。
龔:誠実はHAKKIのビジョン(※)にも入っていますよね。誠実は小林さんにとってキーワードなのですか?
※HAKKIビジョン:誠実な努力が公平に報われる世界
小林:誠実というのは綺麗な言葉で見えづらい部分がありますが、実はこのキーワードは憤りから来ているものなんです。私は人間の原動力は憤りだと考えています。
過去に6つくらいの事業に携わってきましたが、常に私を騙そうとする人達がいました。人柄ではなくいくらお金を持っているかで見られてきました。そんな世界を変えたいと思った。自分が変えたい世界観を社会に実装するのが起業家の定義だと私は考えています。
誠実に生きていない人たちが、物凄く真面目に働いている人たちを蔑ろにしている現実があって、その世界を「どうしても」ひっくり返したいと。憤りが先で誠実というワードは後かもしれません。
龔:声が大きい、特権を持っている人が優遇される世界。頑張っているのに、マイノリティや機会がないといった理由で取り残されてしまった人たちの選択肢が限られる。
私もLIP(※)や本業でもそれらを解決したいと思って取り組んでいます。
※LIPビジョン:すべての人に、チャンスを。
小林:私の幼少期は言語化が必ずしも得意ではなく、声が大きい人に従うタイプでした。
そんな中でも、声は小さいけど意見をしっかり持っている自分をちゃんと見てくれて、話を聞いてくれる人がいて。それは感動体験として残っています。
こういう心が大きい人になりたいという想いもあります。
エモーショナルに紐づいているものは長期のモチベーションになると考えています。
事業をしている中でも、ふとその原体験を思い出すことで、また前に進む活力が出てきます。
次号へ続く・・・・・・